監督・脚本・製作は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)で、全世界の〝スターウォーズロス〟を救った英雄、イギリス人監督のギャレス・エドワーズ。
以下、目次の気になる項目を読むだけで、明日から『ザ・クリエイター/創造者』を語れます。
そんな構成となっております。
ネタバレにはご注意くださいませ。
2023年のAIニュースを予言したかのような近未来SF
エンタメは時代を映す鏡だとかいわれるけど、現代にハマりすぎ。
42年後に100%再発掘される映画です。
映画好きなら孫に伝えるヤツ。
映画企画は2020年にはじまったそうなので、驚きべき合致。
万馬券みたいな大当たり。
ChatGPTをはじめとした生成AIが世界を席巻のなか、使用禁止も
語るまでもなく、2023年はChatGPTが世界を圧巻しましたが、その一方で扱い方については賛否両論。
イタリアや中国、ロシアなどでは使用制限され、Amazonなどの世界的企業、日本の自治体でも使用禁止になったり……。
この構図がなんかまんまと『ザ・クリエイター』なのです。
また、同じく2023年にはハリウッドで「このままではAIに役者の仕事をとられてしまう!」なストライキもありました。
AI撲滅を目指す西側諸国と、AIとの共存を続けるニューアジア連合の戦争
主な舞台となるのは、2070年。
2055年、AIの暴走によりロサンゼルスで核爆弾が爆発し、100万人が死亡。
そのためAIを危険視し、アメリカと西側諸国はAI狩りを宣言。
一方、日本を含む東南アジアを中心とするニューアジア連合は、AI開発を続け、共存を継続したため、戦争状態になるわけです(日本が中心ではないことも興味深い)。
西側諸国 VS ニューアジアの戦いに終結のときがくる
戦争の経緯は描かれていませんが。
物語は、2065年のニューアジアの集落コナンからはじまります。
AIと人類が共存しているとのことですが、全体的に孤児の面倒をみているAIの日常が多く描かれている印象。
つまりAIと罪のない子どもたちが攻撃で亡くなるということです。
西側諸国の1兆ドル超兵器「USSノマド」によって、ニューアジア大ピンチ!
どうやら、アメリカと西側諸国が10年の歳月と1兆ドルの予算をかけて開発した空中軍事基地「USSノマド(北米軌道モバイル航空宇宙防衛)」の活躍によって、ニューアジア連合はほぼ壊滅状態らしい。
そのなか、アポロ計画の予算が1350億ドル(2005年貨幣価値換算)だったと考えれば、1兆ドルはかなりの高額。
ニューアジア連合は、USSノマドを破壊できる新兵器「アルファ・オー」を開発
それに対して、ニューアジア連合は、ニルマータなる〝創造者〟と呼ばれ、AIに崇拝される謎の人物が新兵器「アルファ・オー」を開発。
そこで、潜入捜査するのが、主人公のジョシュア・テイラー軍曹。
このニルマータの暗殺と「アルファ・オー」を破壊することが任務です。
最終兵器「アルファ・オー」とは、AIの少女
これは予告編でも紹介されています。
予備知識ゼロかつ字幕版にて劇場で見たときは、男の子だと思いました。
名前は、アルフィー。
外観からダライ・ラマを彷彿したというレビューも多くありますけど、確かにその描き方はどこかチベット仏教っぽいところも。
主人公を演じるのはジョン・デヴィッド・ワシントン、渡辺謙も忘れるな
主人公のジョシュア・テイラー軍曹を演じるのが、クリストファー・ノーラン監督・脚本・製作『TENET テネット』主演だった、ジョン・デヴィッド・ワシントン。
デンゼル・ワシントンの息子さんです。
潜入捜査したのに、なんか現地のマヤという名の美女と恋に落ち、出産間近。
オープニングの2065年、死別するも……。
その5年後に「マヤが生きているかも?」という情報につられて、再度「アルファ・オー」破壊作戦に参加するんですよね。
死んだはずの愛する人が生きていた?
気持ちはわかります。
ほんで、渡辺謙は、ニューアジア連合の重要なAIとして出演。
ところどころ日本語で話していたり、もしかして日本出身AIなのかしら。
物語のみどころまとめ
ざっと背景だけお伝えしましたが、まとめるとこんな感じです。
・人類(西側諸国) VS AI(ニューアジア連合)の戦争の結末
・USSノマド VS USSノマドを破壊できる力を持ったAIの戦い
・AIなんてただの機械だと考えていた主人公の心の変化
・AIアルフィーは何者なのか、ニルマータとは誰なのか
・主人公は死んだはずの愛する人と再会できるのか
もとロボット業界取材ライターとして感じたこと – 人間を考えること
ロボット研究者インタビューでよく質問していたこと。
その開発の過程において。
「ロボットを考えることは、人間を考えることになりませんか?」
いうまでもなく、答えは100%その通りで、ロボットを考えることは結果として〝人間〟を考えることになるとみなさんいいます。
AI(人工知能)開発も、もともとは人間の脳の再現であり、
ディープ・ラーニングうんぬん、人間を考える研究・開発なんですよね。
もちろんロボットの語源は、チェコ語の「強制労働」であり、奴隷的な意味合いもあります。
しかし、iRobotのロボット掃除機「ルンバ」に、多くの初期ユーザーが名前をつけたように、奴隷というよりペット、またはそれ以上に感じているユーザーもいました。
この映画の舞台となる2070年。
AIが浸透した世界で「ただの機械だ」と考える人がまだ残っているかは疑問でもありますけど、この映画は〝人間を考える映画〟なのです。
もと映画ライターとしての見どころ
実はかなりの低予算映画
これはビックリ。
製作予算は約8000万ドル(約120億円)。
同監督の『GODZILLA ゴジラ』は1.6億ドル、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は約2億ドル。
SF映画してかなり低予算だったこともクローズアップされています。
ちなみに、山崎貴監督『ゴジラ-1.0』は、約1500万ドル(約21億6000万円)。
凄まじい映像、だけど予算は半分以下。映画『ザ・クリエイター/創造者』はどう撮影されたの?
https://www.gizmodo.jp/2023/10/the-creator-gareth-edwards-interview-1.html
監督ギャレス・エドワーズのさらなる覚醒を期待 – SF好きは忘れない
監督ギャレス・エドワーズが、日本ではじめに注目されたのは『GODZILLA ゴジラ』(2014年)となりますが、やはり『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のインパクトは絶大。
残念ながら『ザ・クリエイター/創造者』って、興行的にはダメなイメージですが、SF好きの心には大きく残ったと思います。
日本大好き監督ですので、今後も期待しちゃう。
とはいえ、マーケット的には『ザ・クリエイター/創造者』というタイトルが悪かったかな……というのが個人的な印象です。
副題もあり、タイトルを略せないとSNS時代、拡散もしにくいし。
生きものみたいなAI描写
前半で「AIは仕事欲しさに核攻撃をしたんだって?」「本物の人間みたいだった、生きているみたいだった」「AIは人間じゃない、何も感じない、ただの機械だ」なんてやりとりがありますけど。
ここまで人間っぽいロボットを描いた映画はひさびさな感じ。
そのぶんAIが虐殺されるシーンの衝撃がすごいです。
未来感あふれるビジュアル、メカすごい
多くのレビューで語られている通り。
過去さまざなSF映画で描かれた近未来ビジュアルの延長線上でもあり、微妙なサジ具合というか、いいアンバイ。
なんといっても衝撃的だったのは、空中軍事基地「USSノマド(北米軌道モバイル航空宇宙防衛)」でしょう。
これだけで1万点!
映画史に残るアイデアだと断言します。
オマージュ多数、日本の懐かし特撮ドラマも
ギャレス・エドワーズ監督自身、こんかい『ブレードランナー』(1982年)をはじめ『地獄の黙示録』(1979年)、『AKIRA』(1988年)などに影響を受けたと語り、驚いたのが小池一夫原作『子連れ狼』も参考にしたらしい。
劇中では、いまやオタクでも知らない、日本のテレビ特撮『続スーパー・ジャイアンツ 悪魔の化身』(1959年)や『宇宙快速船』(1961年)も登場。
これ、ブルース・ウィリス主演『フィフス・エレメント』(1997年)にて、リー・ルー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が過去映像を見て歴史を学ぶように……のちのち伏線になるのかと思いきや、特になにもなし。
ベトナム戦争なども彷彿
この感想もネットで多く見かけました。
いわく『地獄の黙示録』(1979年)にインスパイアされたのであれば当たり前ですが、劇中で表示されたニューアジアの攻撃拠点は現在の「タイランド」付近。
ちと、ベトナムより東側でした。
戦闘シーンの多くは『ランボー/怒りの脱出』(1985年)で見たような、ベトナムの風景。
未来の日本も出てくる
劇中で「日本」というコトバは出てきませんが『ブレードランナー』(1982年)的な看板として『龍角散ダイレクト』があったりします。
ワタクシは確認できませんでしたが「ソフトバンクとオリックスの試合速報」もあるそうです。
実際に、渋谷や新宿でも撮影されました。
【映画と仕事 vol.24】渋谷のスクランブル交差点で白昼、ハリウッド大作を撮影する未来はありうるか?『ザ・クリエイター』の日本ロケを支えた男が描く夢
https://www.cinemacafe.net/article/2023/10/20/88081.html
映画『ダリル/秘められた巨大な謎を追って』を思い出した
AI・ロボットに映画にありがちですが。
互いに同じ種族だから操れるというシーンはよく映画で描かれます。
個人的には『ダリル/秘められた巨大な謎を追って』(1986年)を思い出しました。
機械同士なら、話が通じるというシーンなど。

泣ける展開(ネタバレあり)
最も泣けるお話は予告編でも出てくる〝天国〟のエピソードでしょう。
アルフィー「ロボットじゃないなら、人間は誰が作ったの?」
ジョシュア「両親が作った、いまはオフになり天国にいる」
アルフィー「天国って?」
ジョシュア「空にある安らかな場所」
アルフィーは、空を見上げる。
そこには、USSノマドが宙に浮いている。
アルフィー「あなた天国に行く?」
ジョシュア「いや、行くのは善い人だけだから」
アルフィー「あなたは悪いひと。私もダメだ、私は人間じゃない」
この会話の先にあるのが、人類とは? AIとは?という問いかけであり、
エンディングにむけて、涙がこみあげてくるわけです。
それ以外にも感情移入ポイントによって、泣けるシーンはあります。
ふと思えば「天国に行けるか行けないか」がキーワードになる悪党映画っていろいろとあったように思います。その意味では定番といえば、王道の展開です。
速攻レビュー[スゴイSF映画と出逢ったかも…が第一印象]
2023年10月23日(日)午前
TOHOシネマズなんば・IMAXシアターにて『ザ・クリエイター/創造者』にて鑑賞
スゴイSF映画と出逢ったかも…が第一印象。
はじめの30分くらいは、IMAXのせいか……。クリストファー・ノーラン監督作ではないかと疑うほどの映像と展開で「もうノーランやん!」という感覚で見入ってましたが、IMAX上映のせいだったかもしれない。
さすが! IMAX。
とはいえ、どこかで見たことあるようなSF表現やロボット(AI)の見せ方がすべてアップデートされていて〝見たことないもの〟として印象に残り蓄積されていく。
そうなると、細かい表現もとにかくヒシヒシ伝わってくるから「あぁ、劇場で見てよかった」と確信。
神は細部に宿る。
……とはいうものの、物語そのものは雑なところも後半目立ちはじめ、好き嫌いが分かれるかも。
そうなると、こんな映像見たことなかった件についても、急に平凡な描写に見えてくるから、頭の整理が落ち着かない。
ふと思うに、この映画で描かれた未来。
実は過去に見てきたSF映画とすべてが地続きで、そのぶんよりリアルに感じたのだろう。
なんにしても、近年なかなかなかったSF大作としては十分な合格点。
前置きはいいから、結論知りたい人!(完全ネタバレ)
この映画は、2070年が舞台。
AI撲滅を目指す西側諸国と、AIと共存するニューアジア連合の戦争なかで、圧倒的な軍事兵器「ノマド」によって、劣勢となるニューアジア連合。
ニューアジア連合が、戦局を変える最終兵器「アルファ・オー」を開発。
その破壊のために派遣されたアメリカ陸軍兵士が、亡き妻を探すなかで、兵器であるAIの少女と出会い、ふたりで逃亡するなかで心の交流を通わせていきます。
そして最終決戦。
破壊のため、ノマドに潜り込んだ兵士とAI少女はそれを達成。
勝利に歓喜するニューアジア連合でしたが、兵士は犠牲になり、AI少女は機械なのに、涙を流す。
数々の心躍る未来設定やデザインなども印象深く。
興行的には振るいませんでしたが、SF映画ファンの記憶には深く刻まれた、2023年公開映画の代表作となりました。
余談:手塚治虫✕浦沢直樹『PLUTO』がさらにすごかった
同じく、人類とロボット(AI)の共存関係を描いた物語としては。
ただいまNetflixで配信中の『PLUTO』もオススメ。
漫画の神様・手塚治虫『鉄腕アトム』の一遍『地上最大のロボット』を、漫画家・浦沢直樹がSFサスペンスとしてリクリエイト。
全話2日でイッキ見してしまいました。
アニメ『PLUTO』公式サイト
https://pluto-anime.com/
スタッフ・キャスト
■ 映画タイトル:ザ・クリエイター/創造者[The Creator]
■ 制作年:2023年
■ 日本公開日:2023年10月20日
■ 上映時間:133分
■ 製作:アメリカ
■ 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■ 原案:ギャレス・エドワーズ
■ 製作総指揮:ヤリーヴ・ミルチャン、マイケル・シェイファー、ナタリー・レーマン、ニック・メイヤー、ゼヴ・フォアマン
■ 製作・監督:ギャレス・エドワーズ
■ 脚本:ギャレス・エドワーズ、クリス・ワイツ
■ 撮影:グリーグ・フレイザー『DUNE/デューン 砂の惑星(アカデミー賞撮影賞)』『ゼロ・ダーク・サーティ』『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜(アカデミー賞撮影賞ノミネート)』、
オレン・ソファー
■ 編集:ジョー・ウォーカー『DUNE/デューン 砂の惑星(アカデミー賞編集賞)』『ブレードランナー2049』、
ハンク・コーウィン『マネー・ショート 華麗なる大逆転(アカデミー賞編集賞ノミネート)』『バイス(アカデミー賞編集賞ノミネート)』、
スコット・モリス
■ 美術:ジェームス・クライン『アバター』
■ 衣装:ジェレミー・ハンナ/他
■ 音楽:ハンス・ジマー『ザ・ロック』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『トップガン マーヴェリック』『ライオン・キング』『インターステラー(アカデミー賞ノミネート)』『ブレードランナー2049』
■ 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン『TENET テネット』『マルコムX』、
マデリン・ユナ・ヴォイルズ、
ジェンマ・チャン『君たちはどう生きるか(吹き替え)』『キャプテン・マーベル』、
渡辺謙『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』『GODZILLA ゴジラ』『バットマン ビギンズ』、
スタージル・シンプソン/他
(C) 2024 20th Century Studios.
(C) 浦沢直樹/長崎尚志/手塚プロダクション
(C) 浦沢直樹/長崎尚志/手塚プロダクション/「PLUTO」製作委員会


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