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これもひとつの愛のカタチ、サスペンス『ポワゾン』でよもや〝さだまさし〟が召喚された

映画「ポワゾン」 MOVIE

アンジェリーナ・ジョリー主演、ヌーヴェルヴァーグ監督作ハリウッドリメイク、ヒッチコック監督『裏窓』の原作者!これだけでもなんかスゴイ!

● 大注目のアンジェリーナ・ジョリー主演
● フランソワ・トリュフォー監督『暗くなるまでこの恋を』(1969年公開)のリメイク作
● 原作のサスペンス小説『暗闇へのワルツ』(1947年発表)の作家は『裏窓』で有名な小説家

今夏公開のアドベンチャー映画『トゥームレイダー』主演をはじめ、デンゼル・ワシントン主演『ボーン・コレクター』の相棒、アカデミー助演女優賞受賞作となった『17歳のカルテ』などでおなじみのアンジェリーナ・ジョリー。

そんな話題の彼女が主演する『ポワゾン』をさっそく見てきました。

ちなみに今作品は映画潮流〝ヌーヴェルヴァーグ〟の中心的人物としておなじみ、フランソワ・トリュフォー監督のフランス映画『暗くなるまでこの恋を』のリメイク作。同監督は、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしやがれ』原案の人でもあります。

そして、原作はヒッチコック監督『裏窓』やフランソワ・トリュフォー監督の『黒衣の花嫁』の原作者としても有名なウイリアム・アイリッシュによる小説『暗闇へのワルツ』。

これだけ豪華メンツが名前を並べているだけで、おおおお!なるんですけど、なぜか『ポワゾン』の宣伝路線は〝官能恋愛映画〟とか〝“エロチックサスペンス〟なんですよ、これが。

ただの官能恋愛映画とかエロチックサスペンスと呼ぶにはもったいない王道サスペンスムービー

● 官能恋愛映画と思われている『ポワゾン』だけど、実は王道サスペンス
● 真実の愛についての物語『ポワゾン』

なぜか日本では〝官能恋愛映画〟とか〝“エロチックサスペンス〟路線で宣伝され認知された『ポワゾン』。

確かに「R-18(成人指定)」指定されるようなベッドシーン(モザイクがあるほど)もちょっとあったりするし、映画宣伝担当さんが『ナインハーフ』『愛人/ラマン』と同じ路線でPRしたい気持ちも分かるし、女性限定の試写会をやりたくなる気持ちも分かります(最近多くなりましたよね、ターゲット女性の口コミ目的)。

ただし!

物語の冒頭にこんな独白があります。

「ラブ・ストーリーなんて呼べないけど、これは確かに愛についての物語。愛は人生を癒やすこともできれば壊すこともできる」

深い!深い言葉ですよ!

これはアンジェリーナ・ジョリーのセリフなんですけど、これこそが実は『ポワゾン』の本質だと思うわけです。

官能とかエロチックではない、純粋な愛なのです!
しかも二転三転する〝本格サスペンス〟映画なのですよ!

物語のツカミ – 愛を信じていなかったアントニオ・バンデラスが、アンジェリーナ・ジョリー沼にハマっていく

19世紀後半のキューバを舞台に、コーヒー輸出会社経営者で大金持ちのルイス(アントニオ・バンデラス)が、アメリカから妻となるジュリア(アンジェリーナ・ジョリー)を呼び寄せるところから物語ははじまります。

● すぐに恋に落ちるふたり
● 少女漫画やハーレクイン小説のような洒落たセリフ満載
● 夫を裏切るアンジェリーナ・ジョリー

ちなみにルイスは愛にまったく興味がない男。
にもかかわらず……。

ルイス「こんな男でも結婚してくれますか? 金持ちですが」
ジュリア「それは我慢してあげる、私が美人でも結婚してくれますか?」
ルイス「ええ、我慢します」

こんな洒落た会話で出会ったふたりは、即日結婚式。

ジュリア「なぜ、アメリカ人を妻に?」
ルイス「なぜならわれわれは過去で、あなたたちは未来だから。あなたこそ、なぜアメリカを捨てたのですか?」
ジュリア「未来から逃げるため、ただ自分を変えたかったのよ」
ルイス「私も変わっていきたい。君といると自分らしくなれる」

おいおい!アントニオ・バンデラスすでにホレているではないか!

それにあわせて、ジュリアには謎の行動が目立ちはじめ……ついには、ルイスの全財産を持ち逃げ(ちゃんちゃん)。

ここでまだ物語の経過は40分くらい。

もちろんルイスはジュリアを探し続け、ついに再会。
でも、残り約60分で予想外の展開が待っているのですよ……。

愛とはなんなのかを考えさせられる新たな視点を描く映画

冒頭の「ラブ・ストーリーなんて呼べないけど、これは確かに愛についての物語」について、劇中ではさまざまな視点も描かれます。

● 愛はすべて与え尽くすこと
● 欲望はすべて奪い尽くすここと
● さだまさしさん『恋愛症候群』を思い出した
● 観客の価値観が問われてくるルイスの生き様

ルイス「いま人生で最高に幸せだ」
アラン(共同経営者)「幸せな結婚なんてありえないよ、幸せな死がないようにな」

アラン「それは愛ゆえのことか? それとも単なる欲望か?」
ルイス「それはどう違うんだ?」
アラン「大いにね、愛は与えることだ、すべてを与え尽くす」
ルイス「欲望は?」
アラン「すべてを奪い尽くすことさ、容赦なく。それで、おまえは愛か? 欲望か? 君はどちらだね?」
ルイス「両方さ、すべてを与えたい、そしてすべてを奪いたい」

ここで、さだまさし『恋愛症候群』の歌詞を思い出してしまった。

おそらく求め続けてゆくものが恋、奪うのが恋
与え続けてゆくものが愛、変わらぬ愛
だから、ありったけの思いを
あなたに投げ続けられたら、それだけでいい
あなたに出会えて、心からしあわせです

ここにきて、喚起された〝さだまさし〟の傑作!
この『恋愛症候群』では、恋を奪うものと語っていて、とても興味深い。

それでは、すべてを与え続けたアントニオ・バンデラスは〝すべてを奪った〟のだろうか。

とにかく濃いラテンの男、アントニオ・バンデラスは、今回演技派としての底力を証明し、新たな〝愛〟も見せてくれた。

そして、彼の生き様は、観客それぞれの〝愛〟の定義について問うてきてもいるのです。

その答えが、刺さりました。

■ 映画タイトル:ポワゾン[Original Sin]
■ 制作年:2001年
■ 公開日:2001年11月23日
■ 上映時間:116分
■ 製作:アメリカ
■ 配給:ギャガ・ヒューマックス

■ 原作:コーネル・ウールリッチ『裏窓』『暗くなるまでこの恋を』『幻の女』

■ 製作総指揮:シェルドン・アベンド『裏窓(1998年・TV)』、アショク・アムリトラジ『夢駆ける馬ドリーマー』『レオニー』、デビッド・ホバーマン『美女と野獣』『ワンダー 君は太陽』
■ 製作:デニース・ディ・ノビ『ラブ・アゲイン』『キャットウーマン』『シザーハンズ』、ケイト・グインズバーグ『素晴らしき日』、キャロル・リース

■ 監督・脚本:マイケル・クリストファー『イーストウィックの魔女たち』『恋におちて』『心のままに』『或る終焉』※戯曲『シャドウボックス』にてトニー賞、ピューリッツァー賞受賞

■ 撮影:ロドリゴ・プリエト『8 Mile』『21グラム』『バベル』『パッセンジャー』『沈黙 サイレンス』『アルゴ』『消されたヘッドライン』

■ 編集:エリック・シアーズ『晩秋』『ホット・ショット』『理想の恋人.com』

■ 美術:デビッド・J・ボンバ『カンパニー・メン』『ウォルター少年と、夏の休日』

■ 衣装:ドナ・ザコウスカ『ジゴロ・イン・ニューヨーク』『ニューヨークの恋人』

■ 音楽:テレンス・ブランチャード『マルコムX』『インサイド・マン』『あの夜、マイアミで』

■ 出演:アントニオ・バンデラス『デスペラード』
アンジェリーナ・ジョリー『チェンジリング』
トーマス・ジェーン『フェイス/オフ』『ブギーナイツ』
ジャック・トンプソン『英雄モラント/傷だらけの戦士(カンヌ国際映画祭最優秀助演男優賞)』『人生上々だ!』
/他

2023年1月23日追記

あらためて吹き替え版(DVD版にも収録)で見直してみました。

当時は、アンジェリーナ・ジョリー主演イメージでしたが、ホントの主演はアントニオ・バンデラスだったのですね。イマドキの日本的な忖度すればW主演。

さすがに当時のような刺さり方はありませんでしたが、結局アントニオ・バンデラスの〝愛〟の証明である、ラストの××は。やはり衝撃的です。

また、吹き替え版のアンジェリーナ・ジョリーは、菊川怜さん。
アントニオ・バンデラスは草刈正雄さん、謎の男は森川智之さんで、貴重なキャスティングで見ごたえもありました。

草刈正雄さん、似合いすぎ。

Overview in English

No, this is not a love story, but it is a story about love, and the power
it has over our life, the power to heal or destroy.

In Japan, the film “Original Sin” was introduced as a sensual love film or erotic suspense. However, it is actually a royal suspense film.

While there are certainly some scenes that are rated R-18, the film only depicts Antonio Banderas’ earnest love for Angelina Jolie.

It is a remake of François Truffaut’s French film “La Sirène du Mississipi” and is based on the novel “Waltz into the Darkness” by William Irish, who is also well known as the author of Hitchcock’s “Rear Window”. In fact, it is also a classical film.

What I would like to focus on in this context is what love is.

Alan
Is it out of love? Or is it just lust?

Luis
How is that different?

Alan
Much, love is giving, giving all.

Lewis
What about lust?

Alan
It’s taking everything, without mercy. So, are you love or lust? Lust? Which are you?

Lewis
Both, I want to give her everything and I want to take everything from her.

That reminds me of a Japanese singer-songwriter, Masashi Sada. Here is a line from his song “Love Syndrome”.

Perhaps it is love that keeps on seeking, love that takes
Love is the one that keeps on giving, love that never changes
So, if I could keep throwing all my heart to you
I wish I could keep throwing all my heart to you
I am truly happy to have met you

Antonio Banderas, a Latin man with a strong personality in any case, proved his fundamental strength as an actor and showed us a new “love” in this film.

His life also asks the audience to question their own definitions of “love”.

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