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【小説】犬好きさんボロ泣き!ただ犬のいる時間で感じた吐息 – 伊勢英子『グレイがまっているから』

グレイがまっているから表紙 MAGAZINE-BOOK

★文末にネタバレがあります。

犬好きさんでなくてもオススメ。

先週、伊勢英子・著『グレイがまっているから』(中央公論社・中公文庫・1996年12月1日発売)を読み終えました。

建築家(夫)と絵描き(妻)と娘ふたりが暮らす一軒家にもらわれてきた、シベリアンハスキーの子犬、グレイ。

グレイが来たことによって一変した家族の生活を、数々のスケッチと共に綴ったエッセイ風の一冊です。

散歩やしつけのエピソードなとが淡々と語られ、そのなかで優しく静かに流れていく季節を感じる日々。犬と暮らしたことがある方々なら共感できることも多く、とってもおだやかな気分にもなります。

例えば、グレイを獣医さんに任せて旅行に出かけたときの後ろ髪引かれる思いとか……。
仕事で旅に出かけて「ここにグレイがいたらな」と思ってしまい、グレイが待っているから……とついつい家路に着いてしまうあたり、妙にじーんときてしまった。

※以下、ネタバレになります。

グレイがまっているから表紙

そのなか、読んでいて、正体不明の哀しい気持ちが見え隠れ。

それが判明するのは、巻末の書き下ろし「四年後…」で綴られていたのは、グレイの他界。
グレイは4年後にガンで亡くなったという。

ノンフィクションだから余計に感じた、グレイが生きた日々の息づかい。

その闘病生活は、続編の『気分はおすわりの日』『グレイのしっぽ』にて描かれているそうだけど、これから読むつもり。

ここまで読んできたからには、グレイの生きてきた証みたいな時間を自分も〝ちゃんと〟を感じ共有したい。

2023年1月18日追記

ふと思えば約30年前の作品となる『グレイがまっているから』。調べてみれば、伊勢英子さんは「いせ ひでこ」というお名前で執筆活動を続けており。

驚いたのは、2022年6月に『愛蔵版 グレイがまってるから』が平凡社から出版、四半期以上もこの作品が愛され続けていたこと。

平凡社の『愛蔵版 グレイがまってるから』公式サイト
いせ ひでこさんのコメントが泣かせます。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b605652.html

とはいえ、初版当時のペット事情は2023年の現在とは大きく違うこともあり、ネットレビューには「こんな飼い方ありえない」という声も出ている現代。

また、かつてテレビドラマ化もされた、佐々木倫子さんの大ヒット少女漫画『動物のお医者さん』(1988〜1993年、花とゆめ連載)で、シベリアン・ハスキーブームが起きたことも、いまや忘却の彼方。

いわゆる〝流行〟が何周もしたと考えられるいま現在、知る人ぞ知る『グレイがまっているから』が未だ支持されていることはイマドキ驚くべき事実。

隠れた名作として、ぜひご一読いただきたい。

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